臨床工学技士が透析室から手術室勤務に変えて見えた世界

臨床工学技士が透析室から手術室勤務に変えて見えた世界

臨床工学技士として透析室に勤務していた頃、私は「毎日同じような業務の繰り返しだな」と感じる瞬間がありました。
患者さんとの関わりが深く、技士として責任も大きい一方で、業務範囲が一定に限られているのも事実。
そんな中、思い切って手術室(オペ室)勤務へ異動したことで、医療技術者としての視野が大きく広がりました。
この記事では、その変化と学びをまとめます。


透析室勤務で得たもの

透析室では、患者さんと最も長く関わる職種の一つです。
定期的に顔を合わせ、血液浄化装置の操作・トラブル対応・穿刺補助・回路準備などを日々行います。

特に得られた経験は以下の通りです。

  • 患者対応力・観察力
    小さな体調変化にも気づく力が磨かれた。
  • 装置管理スキル
    ダイアライザやRO装置など、血液浄化システム全体を理解できた。
  • 安定した業務サイクル
    定常的なスケジュールの中でチーム連携が確立されていた。

しかし一方で、「もっと機器全般を扱いたい」「緊急対応や新しい手術機器にも携わりたい」という思いが強くなっていきました。


手術室勤務での最初の衝撃

手術室に配属された初日、まず感じたのは**医療現場の“スピード感と緊張感”**でした。
透析室では1件あたり4〜5時間かけて治療を行いますが、手術室は分単位で機器を動かし、患者の命を直接支えます。

オペ中は以下のような業務を担当します。

  • 人工心肺装置や電気メス、麻酔器などの機器操作・点検
  • 手術ごとの回路準備・滅菌・接続確認
  • 医師・看護師・麻酔科とのリアルタイム連携

透析室とは異なり、一瞬の判断ミスが手術全体に影響するため、常に緊張感を持って業務にあたる必要があります。


手術室で見えた「医療の全体像」

手術室に移って最も大きかったのは、「医療チームの全体像が見えるようになったこと」です。

  • 医師の思考・手技の流れを理解できる
    手術ごとの目的・合併症リスク・手技の進行をリアルに学べます。
  • 臨床工学技士の役割の広がりを実感
    循環器・呼吸・麻酔・電気安全など、幅広い領域に関われる。
  • チーム医療の中核に立てる
    「医師・看護師のサポート役」ではなく、「安全な手術を支える専門家」としての存在意義を強く感じます。

透析室では「一人の患者を継続して支える」喜びがありましたが、手術室では「一瞬の集中で命を守る」緊張と達成感があります。


キャリアチェンジに伴う課題

もちろん、異動後にすぐ慣れたわけではありません。
特に最初の半年は以下の壁に直面しました。

  • 医療機器の種類が多く、覚える量が膨大
  • 医師の指示が短く速く、判断スピードを求められる
  • 手術前後の滅菌・記録など、事務的負担も多い

ただ、この経験が自分の技士としての“汎用力”を鍛えてくれました。
「どんな現場でも即戦力になれる」という自信は、この環境でしか得られなかったと思います。


手術室勤務を経験して得た成長

透析室時代にはなかった次のようなスキルが身につきました。

  • 機器トラブル対応力の向上(緊急時の切り替え判断など)
  • 手術工程の理解とリスク予測
  • 医療安全・電気安全への深い理解
  • マルチタスク対応力とメンタルの安定性

これらはどの現場に戻っても通用する“応用力”となります。


キャリアの視点から見た「手術室勤務」

手術室経験を積んだ臨床工学技士は、将来的に以下のような道も開けます。

  • 手術支援ロボット・医療機器メーカーへの転職
  • 教育・指導職(ME教育担当、CEリーダーなど)
  • 病院内の医療安全・機器管理責任者

透析だけでなく、「医療機器を統合的に扱える技士」としてキャリアの幅が広がる点が大きな魅力です。


まとめ:一歩踏み出すと、見える世界が変わる

透析室から手術室への異動は、決して楽な道ではありません。
しかしその先には、「医療技術者としての真の成長」があります。

日々の治療を支える技士から、命の最前線で医療チームを支える技士へ。
環境を変える勇気が、自分の可能性を大きく広げてくれると感じています。